パタゴニア プロビジョンズの協力のもと開催された、第3回「THE BLUE DINING」。
今回は、C-Blueのメンバーシェフである「ドンブラボー」オーナーシェフの平 雅一シェフと、パタゴニア プロビジョンズ ディレクターの近藤勝宏さんと共に、「美味しくイワシを味わおう!」をテーマに食物連鎖の下位に位置する魚(小型魚)を食べる重要性について、語り合いました。
なぜイワシを語り合う会なのか?~イワシは日本人にとって身近な魚~
日本人にとって身近な魚のひとつ「イワシ」。令和5年現在、海面漁業において最も漁獲の多い魚です。
一口に「イワシ」と言ってもマイワシ、カタクチイワシ、ウルメイワシと種類は様々。マイワシは煮つけや缶詰、お刺身としてよく見かける、イワシの代表とも言える魚です。カタクチイワシも、出汁に欠かせない煮干しに加工される他、稚魚は「シラス」としてスーパーなどで目にすることも多く、「イワシ」は私たちの食卓に欠かせない魚と言えそうです。
イワシは実は、2割しか人の口に入っていない!?
動物性プランクトンを食べて育つイワシは、食物連鎖の下位に位置する魚で、養殖のブリやヒラメは、主にイワシを使ったフィッシュミールを餌に育ちます。日本全体の漁獲量が減ってきている中で、依然高い漁獲量を維持しているイワシ。にも関わらず、私たちが口にしている量がわずか2割というのは、なんだかもったいない。「おいしい!」をきっかけに、イワシの重要性を知ってもらいたい! そんな願いから生まれたのが今回の企画です。
パタゴニア プロビジョンズ × 平シェフ 特別メニューで味わうイワシの「美味しさ」
第3回目となる今回のイベントは、「Don Bravo(ドンブラボー)」の姉妹店である「CRAZY PIZZA at SQUARE」にて開催。クラシックなイタリア料理をベースにしたクリエイティブな料理を展開する、同店オーナーシェフの平シェフが、この日のために特別に開発した2種類のオリジナルメニューが披露されました。
1品目は、パタゴニア プロビジョンズさんの新製品、「ホワイト・アンチョビ(片口鰯のオイル煮)スパイシー」を使用し、トッピングにレモンをあしらった爽やかなピザ。
シンプルな素材で、メインのカタクチイワシを目立たせつつ、レモンの酸味やほのかな苦味、赤玉ねぎの辛みがアクセントとなり、深い味わいに仕上がっていました。
パタゴニア プロビジョンズさんの「ホワイト アンチョビ」シリーズに使われているのは、スペイン北部沖のカンタブリア海に生息するカタクチイワシ。個体数が豊富で適切に管理された群れから小規模な巻き網により漁獲することで、混獲や乱獲を防いでいる、持続可能な漁を続けている地域です。
パタゴニア プロビジョンズさんのカタクチイワシの調達や、製品情報について、詳しくはこちらをご覧ください。
▼製品情報
2品目は、真鰯のロザマリーナパスタ。「ロザマリーナ」とは、イタリアのカラブリア州特産の塩辛のような伝統的な食品で、生シラスを唐辛子と塩、オリーブオイルに漬け込んで発酵させたものです。本来は、「カタクチイワシ」の稚魚である「シラス」を使うのですが、今回味わったのは、あえて「マイワシ」を使った、平シェフオリジナルのロザマリーナ。刺激的な辛さの中に、複雑で濃厚な旨味があるのが特徴です。
一見、濃厚なクリームパスタに見えるのですが、クリームソースの下にロザマリーナを忍ばせることで、濃厚なアラビアータのような風味を演出。仕上げには夏らしくかぼすを装い、さっぱりと仕上げました。
参加者の後を追う形で、平シェフの料理を召し上がった、パタゴニア プロビジョンズの近藤さんも、「皆さん、僕が話している中でこんなにおいしいものを食べてたんですか!もっと早く教えてくださいよ~」と声をあげるほど。おいしい料理を目の前に、外の熱気に負けないほどの議論が続きます。
わたしたちがイワシを食べる意味
我々人間が食べているイワシは全体の漁獲量のわずか2割程度。その事実に驚く参加者も多く、なぜ、人間の口に入るイワシがそれほど少ないのか?について、関心が寄せられました。
冒頭のグラフにあるように、非食用としては主に、養殖用の餌や飼肥料として利用されています。正確な数値は研究段階ではありますが、養殖魚を1kg太らせるためには、1㎏以上(ブリは7kg、マグロは15kg)のエサが必要と言われています。それらの大型魚は、切り身で売られていることも多く、寿司ネタとしても人気の高い魚で、養殖魚の需要も高まっていますが、その分、エサとして必要になる小魚の量も増えていくということになります。
魚を使わないエサの研究も進んではいますが、現状は天然魚がエサの主流であり、食物連鎖を考えても、大型魚は小型魚を食べて育つのが自然な形ではあります。
「流通している大型魚をおいしくいただくことはもちろんのこと、そのような大型魚を口にする際には、その背景にある小型魚の存在にも、思いをはせてほしい」
という佐々木のメッセージや、
「おいしい食べ物が ”不自然” に生み出される世の中はつくりたくない。なるべく、”自然” な生産システムの中で生まれた食べ物で、おいしい体験をしてほしいと思って、プロダクトづくりをしています。」
という近藤さんの言葉に、今いただいたイワシを始めとした小型魚を食べる意義を考えなおす時間となりました。
「おいしい!」を入り口に深まる海への思い
ブルーコミュニティメンバーを中心に、シェフ、スタートアップの起業家、主婦、学生と様々なステータスの方が集った第3回「THE BLUE DINING」。
「なぜ食用になるイワシがこんなにも少ないのか」
「よりサステナブルな海の環境を作るために、購入するべき魚種は何があるのか」
「どのようなプロダクトを作ることが、海へのインパクトとなるのか」
「レストランで表現できるサステナビリティとは」
など、様々な視点での質問が飛び交い、終了後も各々に議論を続けるなど、大いに盛りあがる会となりました。
海への思いの起点は、「おいしい」という体験。
「イワシの美味しさをありありと体感したからこそ、イワシが十分に食べられていない現状や、イワシの資源量の推移、生態系について、もっと知りたいと思った」
と話してくれた参加者。
膨大な海の課題は目の前に広がっているものの、あまりにも広く深いため、中々自分事として実感しづらいのが現状。かくいう私も、一年前まではぼんやりとしか、課題を認識できていませんでした。
そんな遠く果てしない課題を、少しでも身近にするのが「おいしい」という体験。そして最上級の「おいしい」体験とともに、海の未来を考えるきっかけを作っていけるのが、我々シェフチームの一番の強みであると、改めて実感しました。
「おいしい」を入り口に、海の課題を自分事として捉え、行動していく人が1人でも増えるよう、今後も様々な企画を進めていきます。