一般社団法人Chefs for the Blueは2019年10月21日、東京ミッドタウンBASE Qホールで、サステナブルシーフードセミナー「私たちの食糧庫である海を守ろう~オリヴィエ・ロランジェ氏を迎えて~」を主催しました。ほぼ告知なしの条件下、参加希望は180名定員に対し260名超。全4時間のセミナーは終始熱気に包まれ、大成功をおさめました!

当日は、まず株式会社シーフードレガシーの花岡和佳男氏が登壇。「世界のレストラン業界とサステナブルシーフード」というテーマで、シーフード生産の世界の現状、流通や消費におけるトレンドをお話くださいました。続いて、東京海洋大学の勝川俊雄准教授による「日本の海の今」についての講演。科学的なエビデンスを交えながら、激減を続ける日本の水産資源の現状を伝え、今後考え得る道筋についてご教示くださいました。

続くパネルディスカッションは2つです。まず「生産・流通パネル」として焼津の魚屋三代目、サスエ前田魚店の前田尚毅氏と、全国を回り水産流通の新しい形態を作りあげた羽田市場株式会社の野本良平氏が登壇し、相模湾の現状と日本各地の浜の窮状を話してくださいました。「どんな魚にも尊い命があり、雑魚として捨てられることが多い魚種でもきちんと処理してあげることで活かされる」という前田氏の魚に向けた愛情あふれる目線、トレーサビリティがない日本の水産業界にあって、「誰が、どこで、どんな漁法で獲った魚かをきちんと把握しており、がんばっている漁師を指名買いして支えることができる」という羽田市場の方針には学ぶ点が多かったと思います。それらの事例に対し、弊法人リードシェフの「シンシア」石井真介が、料理人としてこの現状をどう受け止めるか、漁業者や流通システムをどう支えていけるかを熱く語りました。

二番目は「料理人パネル」です。弊法人理事の「レストラン カンテサンス」岸田周三は、水産資源の枯渇は日本の食文化の危機であり国益を大きく損なうことにつながると話し、国に対して乱獲防止に向けた実効的なルール作りを訴えました。「神戸北野ホテル」の山口浩総料理長は、海は日本のアイデンティティの形成に大きく寄与しており、その海の資源を守るために料理人は断固とした行動をとる必要があると話しました。そして「日本橋蛎殻町すぎた」の杉田孝明氏は、江戸前鮨職人として先人から受け継いだバトンを未来につなぐことは自分たちの責務だと語り、「まずは知ることが大切」「僕は、この状況のなか何もしない『かっこ悪い大人』になりたくない」とまっすぐで飾らない言葉を紡いで力説。料理人はじめ飲食関係者で満席の会場は、水を打ったように静まり返りました

最後はメインスピーカー、オリヴィエ・ロランジェシェフの特別講演です。フランスの海のくに、ブルターニュ地方に初の三ツ星をもたらしたロランジェ氏は、2009年にホテル・レストランのグローバルアソシエーション「ルレ・エ・シャトー」の副会長に就任。以降、水産資源の保全に向けた啓蒙活動を精力的に続け、世界中でムーブメントを起こしてきました。この日は自身が水産物を調達する際、どのようなガイドラインを設けているか(サイズ、漁法、漁期など)を紹介。日本の料理人に向けて、魚の資源保全のためにシェフたちが果たせる役割と責任は大きいと鼓舞し、ヨーロッパの若者の間ではレストランの評価にサステナビリティの観点を組み込むことは普通になったと話しました。

全4時間のセミナーは終始熱気に包まれ、真剣な質疑応答が見られるなど、大成功をおさめました。本会が、日本の飲食業界に何らかの気づきを与えるものになったことを祈ります。

メインスポンサーのぐるなび様をはじめ、ブライトリング様、NTT東日本様、竹本油脂様など、多くの協賛社様には多大なご支援をいただきました。代理店のNKB様には細やかな運営サポートを、そして放送作家の塩沢航様には台本や当日のディスカッションサポートなど、大いに助けていただきました。

皆々様に心から御礼申し上げます。どうもありがとうございました。