
C-BlueメンバーインタビューVol.20は、「カリナリーディレクター/日本料理・そ・かわひがし」の中東篤志さんです。代々料亭を営む家系に生まれ、12歳から父である「草喰なかひがし」の主人・中東久雄さんのもとで料理を学び始めた篤志さん。
その後、米NYの精進料理店で副料理長とGMを経験するという異色のキャリア。
飲食店プロデュースやイベント企画など、多角的に活躍する中東さんに、シェフス・フォー・ザ・ブルーならではの体験について語っていただきました。
中東さんは和食の料理人からキャリアをスタートし、いまは料理を「伝える」仕事をしています。生産者さんのことを料理人に伝えたり、お客さんに料理の背景を伝える、お客さんの反応を生産者さんに伝える、などの仕事です。
「仕事柄、僕は漁師さん含め、いろんな生産者さんを訪ね歩き、繋がっています。ですから、2021年にシェフス・フォー・ザ・ブルー京都支部ができるからと、前田元さん(MOTOI)や坂本健さん(チェンチ)からお誘いいただいた時、『水産資源の今を勉強したい』というよりは、『料理人の人たちがどんなことを知っていて、何に共感し、何を求めているか知りたい』という気持ちが動機になって参加したんです」
ただ、実際に勉強会に参加したところ、「すごく多くの学びを得た」と中東さんは言います。
「水産の現場には多く行っていていましたが、俯瞰して見て知るということができていなかったな、と思いました。勉強会でその視点を得られたのは大きいですし、全国の事例を色々と知れるのも勉強になっています」
勉強会での学びを、自身の経験と重ね合わせて料理人や食べ手、スタッフに話すことで、より深く、確実に「伝える」ことができていると手ごたえを感じているといいます。
「昨年(2024年)、イタリアでスローフードの祭典『テッラマードレ』が開催され、参加した際にも、水産資源についてのディスカッションがありました。海外のシェフたちはTAC(漁獲可能量制度)のことなど、結構知っているんです。シェフス・フォー・ザ・ブルーの勉強会で学んでいなかったら、僕はあの場であんまり喋れてへんなって思いました」
24年には、学生たちが水産の現場を体験し、その学びをレストランの企画・運営という形でアウトプットする「THE BLUE CAMP」のサポーターとして参加しました。
「めっちゃいい経験でした。終わった瞬間に『来年もやらせてください』って言うくらい(笑)」と中東さん。次世代の若者たちの人間力が、ブルーキャンプの経験を通して磨かれているのを見られる、とても充実した時間だったと振り返ります。
シェフス・フォー・ザ・ブルーでの学びや経験を経て、自身が運営する飲食店で選ぶ魚も少しずつ変化していると言います。
「選択する基準というか、選ぶために考えることが増えました。
例えば、これはたくさん食べていい魚なのか、この魚を消費することで(捕食などの)関係する魚種は増えるのか減るのか…。スタッフにどう説明してこの魚を使うのか、多角的に考えるようになりました」
コロナ禍に再び深く日本を見つめ直し、これからは海外に日本の食文化を伝えていくという中東さん。「運営する飲食店の一つで、年間52週のうち47週間にわたって各都道府県の食材を使ったメニューを作っています。毎週違うメニューという突拍子もないことではありますが、広く国内を知って、価値を海外にちゃんと伝えていきたいです」と話します。
「シェフス・フォー・ザ・ブルーでは、和食の料理人さんの仲間をもっと増やしたいですね。
特に京都は、こんなに日本料理のお店があるのに、メンバーの割合が少ないんですよ。海外のお客さんが多い京都の和食料理人こそ知っておきたいことが学べる場だと思っています」