
C-BlueメンバーインタビューVol.23
は、「メログラーノ」の後藤祐司さんです。大らかなイ
タリア郷土料理に定評があり、2015年の開業以来、多くのイタリア好きや食通に支持され
ています。「料理は、さまざまな人との繋がりで渡されたバトンを受け取って、ようやく
完成する」と語る後藤シェフに、食材への思いと、シェフス・フォー・ザ・ブルーでの学
びについて伺いました。
2015年、開店から10年目を迎えた「メログラーノ」は、ごく近くに移転し、席数を増やし
ました。
「自分はアラカルト料理が好きなんです。今は10キロほどのブリを丸ごと仕入れて、身は
焼いたり、内臓は塩漬けにしてソースにしたりと、余すことなく使い切れる。席数を増や
したことで、ようやく自分が描いていた料理のスタイルを実現できるようになりました」
開店当初は「イタリアそのまま」の料理を出していた後藤シェフ。しかし食材を知るにつ
れ、料理は次第に「日本の豊かな食材で作るイタリア料理」へとシフトしていきました。
「きっかけは滋賀の精肉店『サカエヤ』の新保さんとの出会いです。僕の料理を見て、そ
れに合う肉を選び、仕上げてくれる。そうした関わりのなかで気づいたのは、食材には生
産者がいて、それを大切に扱うお肉屋さんや魚屋さんがいて、最適な状態で運んでくれる
人がいる、ということでした。料理人はその信頼や期待を託されていて、そこに責任感と
喜びが同時にあるんです」
同じ頃、後藤シェフはChefs for the Blueの勉強会に参加し始めます。きっかけは、お客さ
んとの会話でした。
「『今年もサンマが少ないらしいね』と魚の話題になるとき、自信を持って具体的に話せ
ない自分にモヤモヤしていました。そんな時、知人のシェフが勉強会をしていると聞き、
参加したんです」
初めての勉強会では、漁獲量の減少を数字で突きつけられ、大きなショックを受けたとい
います。
「当初は『料理人の自分に何ができるのか』と思いましたが、仲間がいれば一歩ずつ進め
る、と次第に思えるようになりました」
大きな手ごたえを感じたのが、2019年にChefs for the Blueが開催した大型セミナーです。
欧米でサステナブルな動きを牽引してきたフランスの料理人、オリヴィエ・ロランジェ氏
をゲストに迎え、研究者や鮮魚流通業者などが「海の今とこれから」を共有。参加者は260名を数える、大規模な会となりました。
そして2025年の今年、後藤シェフは大学生・専門学校生を対象とした次世代育成プログラ
ム「THE BLUE CAMP」にメンターシェフとして参加しています。
「自分が何かを伝えるというより、若い人の声や意見を聞いて学びたい気持ちの方が強い
ですね」と語ります。
今後、Chefs for the Blueを通してどのような活動を考えているか聞いてみました。
「レストランだけでなく、ご家庭や日常の場でサステナブルシーフードを手に取れる機会
を増やしたいです。これまで大手食品メーカー、コンビニ、スーパーと協働し、商品開発
に取り組んできたのですが、サステナブルシーフードを使った商品も開発してみたいと
思っています。また、スタッフを連れて漁港や産地を訪ね、現場の方々の声を直接聞く機
会も増やしたいですね」
さらに、調理師専門学校などで持続可能な食材調達について講義をしてみたいとも考えて
います。「料理人の仕事は、料理の提供や調理技術の伝承だけではない」という意識も、
Chefs for the Blueでの経験を通して育まれた大切な気づきです。