
C-BlueメンバーインタビューVol.24は、「koke(コケ)」の中村勇作さんです。
京都・烏丸御池エリアに店を構える「koke(コケ)」は、スペイン料理の技法と沖縄の郷土料理の知恵を掛け合わせ、“火と水”をテーマにした独自の世界観をつくり出すイノベーティブ・レストランです。水の良い土地で料理をしたいと京都を選び、2021年の開店から半年でミシュラン一つ星を獲得。中村有作シェフは、「エディション・コウジ シモムラ」や「カ・セント」での修業、「Maruta」の立ち上げを経て独立した新世代の料理人です。中村シェフが海に興味を持ったきっかけ、Chefs for the Blueへの参加から料理への意識の変化について聞きました。
koke の料理は、沖縄の海と京都の山をつなぐような独自の世界観が特徴です。中村シェフのルーツである沖縄の魚に、京丹後や近郊の野菜、そして敷地内の地下から汲み上げた水を合わせ、スペイン料理や沖縄料理の手法をヒントに、発酵や薪火なども織り交ぜコースを組み立てています。
食材の中で特に、宮古島の漁師・高田さんから届く魚は欠かせない存在。高田さんは“必要な分だけ獲る”という漁を徹底し、海中でしめて血抜きや下処理まで行うため、遠く熱帯の海から届く魚でも驚くほど状態が良いといいます。「必要な魚だけを獲る姿勢に強く惹かれました」と中村さんは話します。
海の資源に関心を持った最初のきっかけは、神戸での修業時代でした。毎年扱っていたイカナゴが、ある年から突然手に入らなくなったのです。「本当に魚は減るんだ、と実感しました」。
続くサンマの不漁や、明石の魚価の高騰など、魚の“当たり前”が変わっていく現実を前に、料理人として問題を意識せざるを得なくなったといいます。
Chefs for the Blueの存在は以前から知っていましたが、当初は「若い自分が入っていいのか」という迷いもあった、と中村さん。転機となったのは、チェンチの坂本シェフからお声かけいただいたことです。
「若い世代が必要なんだ。勉強の場でいいんだよ」と背中を押され、参加を決めました。沖縄出身として海は身近な存在ではあったものの、改めて、料理人として資源に向き合う責任を実感するようになったといいます。
参加後は未知の知識が次々と飛び込んできました。「知らないことばかりで、今も学び続けています」。その学びの中で特に大きかったのは、“使わない選択”が自然にできるようになったことです。「イノベーティブ料理は必ず使うべき魚がないので、資源が減っている魚や希少な魚は無理に使わないと決めました」。
また koke では、魚を余すことなく使い切る仕組みを徹底しています。骨や頭は出汁に、端材は魚醤や塩漬けに。「魚の価値を最大化するのは料理人の役割です」と語ります。
Chefs for the Blue の活動で最も刺激されるのは、海に対して真剣に向き合う料理人たちの姿、と中村さん。「意識のある料理人の皿は、食べるとどこかで伝わってくるんです」。また、ブルーキャンプで若い世代が熱心に海を学び、未来のために行動している姿にも心を動かされたといいます。「僕らの世代は逃げ切れるかもしれない。でも息子が大人になる頃、選べる魚が減っていたら申し訳ないと思いました」。
いま中村さんが挑んでいるのは、魚の新しい価値づくりです。「ブダイのように市場価値が高くない魚でも、調理次第で驚くほど美味しくなります」。日々の料理を通して、これまで注目されてこなかった魚に新しい価値を見出そうとしています。