持続可能な食の未来に向けて、さまざまな食のプレイヤーが日々学びと挑戦を続けている中、日本の魚のすばらしさを深く理解し限りある資源を活用できる立場として、作り手と食べ手を繋ぐ立場として、トップシェフたちが見据える「海の未来」とはどのようなものなのか。ランチ&トークセッションと展示を通して、我々の海の未来への思いを表現しました。

(1)【ランチ&トーク】「海と食の未来をつくる」

5月18日(土)、5月19日(日)の2日間限定で、所属シェフらによる特製ミールボックスの提供と「海と食の未来」をテーマにしたトークセッションを行いました。

【ミールボックス内容】
5月18日(土)-「シンシア」オーナーシェフ 石井真介 考案ミールボックス
・すずきの黒米焼き ベアルネーズソース
・長谷川さんの明日葉 野草 山菜のごはん
・しろえび倶楽部のしろえびフリットとシーベジタブルの海藻サラダ 野菜ドレッシング ハーブオイル
・パンガシウスのベニエ ソースマドラス
・ブラックタイガー ホタテ貝 カリフラワームース ブイヤベースジュレ
・魚のリエット たい最中

5月19日(日)-「ラ・ボンヌ・ターブル」シェフ 中村和成 考案ミールボックス
・大西洋くろまぐろテールの蜜焼き
・しろえび倶楽部のしろえびと季節野菜のちらし寿司
・大西洋くろまぐろテールのコンフィ【シーチキン】が主役のサラダニソワーズ
・味玉、えびマヨネーズソース
・長井漁港のぶだいのベニエ
・キャロットラペ

「シンシア」オーナーシェフ 石井真介 考案ミールボックス

「ラ・ボンヌ・ターブル」シェフ 中村和成 考案ミールボックス

 フードジャーナリストとして漁業の現場で感じた「海の危機」。そして、日々の仕入れや調理の中で海の資源と向き合う料理人として感じた「海の危機」。両者の思いが合流することで始まったのが、我々の活動です。
 トークショーでは、そんなこれまでの経緯、今どのような課題に向き合っているのか、これからの海と日本の食文化のために、私たちが起こしていくべき変化とは何かについて、代表の佐々木と2人のシェフが議論を交わしました。 

 お弁当を囲みながら、トークを聞いてくださった方の中には、熱心にメモをとる姿も。海の現状や未来を、言葉やデータだけでなく、「おいしい」という食体験を通して伝えることができるのが、我々シェフチームの最大の強みです。今回のイベントは、その強みを改めて実感させていただく機会となりました。

(2)【展示】「シェフが見据える海の未来展」

 日々漁業や調理を通して、海と向き合う立場として、海にとっても食べ手にとっても、より良い魚をより良い方法で獲り、より良い食べ方で味わってもらいたい。
展示ブースでは、そんな漁業者とシェフのコラボレーションを海を未来につなぐ6皿として表現しました。

①「シンシア」石井真介シェフ×「大傳丸」」(千葉・船橋)大野和彦さんのスズキ
ー”少なく獲って稼ぐ”にチャレンジする江戸前漁師

②「ラ・ボンヌ・ターブル」中村和成シェフ×臼福本店「第一昭福丸」(宮城・気仙沼)臼井壯太朗さんの大西洋クロマグロ
ー”世界一サステナブルな本マグロ”をマーケットへ

③「茶禅華」川田智也シェフ×「白鷹丸」(神奈川・横須賀)仲地慶祐さんなどのミシマオコゼ
ー低利用魚の価値を再発見し、三ツ星店のスペシャリテに

④「ノーコード」米澤文雄シェフ「フラットアワー」(長崎・対馬)銭本慧さんのハタ
ーまだ小さな未成魚を海に残し、成魚を狙って世代をつなぐ

⑤「御料理ほりうち」堀内さやかシェフ×「第六恵美須丸」(京都・宮津)村上純矢さんのニホンハマグリ
ー研究者とタッグを組み、科学的根拠をもとに貝を守り育てる

⑥「恵比寿えんどう」遠藤記史シェフ×「富山湾しろえび倶楽部」(富山・射水)のみなさんのシロエビ
ー科学の視点とプール制漁業。チームで資源を未来につなぐ

 ランチ&トークを終えた後は、参加者が展示ブースを囲み、漁師さんや仲買さんに思い思いの質問を投げかける時間が続き、会場は夏日に負けない熱気を帯びた空間となりました。
シェフ、ジャーナリスト、漁業者。立場の異なる当事者のリアルな言葉が、参加者にとって、海のリアルを映し出すきっかけとなったと思います。

 チームシェフだけでなく、長年海の資源を守り続けてきた熟練の漁業者、近年、新たな取り組みを始めた若い漁業者や流通事業者、海の課題に向き合おうと学びを続ける学生など、我々は日々立場も世代も異なるさまざまな人たちと、海の未来を考える機会をいただいています。当事者のリアルを知ることで、自らも海と向き合う当事者となる。そのようにして、一人ひとりが当事者として「海の未来」を語れる世の中を作っていくことが、我々の活動の大きな意義だと感じています。

 知ることで始まるアクションがあり、アクションすることで変わる未来がある。


そう信じて、私たちはこれからも学び、行動し、挑戦し続ける、そんなシェフチームであり続けたいと思います。

photo : Rintaro Kanemoto